国際的な茶の需要傾向

今後の日本の茶業にも関わってくる市場予測が、国連食糧農業機関(FAO)の傘下、茶に関する政府間グループによるレポートで知ることができます。2018年に発行されたレポートですが、2021年現在でも有益なデータを知ることができます。日本国内では需要の低下が止まりませんが、世界的に見ると需要が増加しています。

日本茶の販路開拓をするなら、よくある米国や欧州以外という選択肢もあります!新興国での茶の消費量増加が注目されています。

世界の茶の消費量と生産量は、発展途上国や新興国の積極的な需要に牽引され、2027年頃まで増加し続けると予測されています。茶の生産国では農村部での新たな収入機会が創出され、食料安全保障が向上すると見込まれています。

茶の消費量はインドや中国などの新興国で特に急速に増加しています。この背景には所得の増加と、ハーブティー、フルーツフュージョン、フレーバーグルメティーなどの商品を含む生産の多様化に向けた取り組みが相まっています。

茶の消費は、抗炎症、抗酸化、ダイエットなどの効果に対する認識の高まりからも恩恵を受けていることが示唆されています。このようなヘルス&ウェルビーイング効果は、今後の消費拡大の重要な原動力になると考えられます。

国際的な視点からお茶の生産や販売に関わるポイントを要約します。

1. 茶の生産量増加

お茶の生産量は紅茶や緑茶など全般的に増加傾向にあります。

世界の紅茶生産量は、主要生産国である中国、ケニア、スリランカでの大幅な生産量増加を反映し、今後10年間で年率2.2%の増加となり、2027年には440万トンに達すると予測されています。特に中国の茶の生産量増加が顕著です。

さらに中国の緑茶生産量は2015年から2017年の150万トンから2027年には330万トンへと2倍以上に増加すると予想されています。

2. 気候変動による影響

茶の生産は栽培条件の変化に非常に敏感です。茶は特定の農業生態学的条件でしか生産できないため、ごく限られた国でしか生産できません。そして茶の生産国の多くが気候変動の影響を大きく受けることになります。

気温や降雨パターンの変化、洪水や干ばつの増加は、すでに収穫量、茶葉の品質や価格に影響を与え、所得を低下させ、農村の生活を脅かしています。このような気候の変化はさらに激しくなることが予想され、早急な適応策が求められています。これと並行して、茶の生産・加工に伴う二酸化炭素の排出量を削減することで、気候変動の緩和に貢献する必要性が認識されつつあります。

3. 若者の間での流行

世界のお茶の需要は、新しい顧客層からの恩恵も受けています。中国やインドなどの大規模生産国の都市部の若い消費者は、最も急速に成長しているセグメントとして浮上しています。インドや中国の若者は特色あるお茶にプレミアム価格を支払うだけでなく、自分たちが消費する製品について、その品質や産地、持続可能な開発への貢献などをもっと知りたいと思っています。

さらに上流階級の若い消費者は、自分のライフスタイルに溶け込んだおしゃれで流行への感度がいい製品を求めています。専門のティーショップや高級レストラン、ホテル、カフェなどの洗練された場所で消費されるようなお茶を好みます。

4. 西欧諸国での需要減少

世界の紅茶消費量は過去10年間で増加していますが、ドイツを除くヨーロッパの伝統的な輸入国では、消費が低下しています。全体として、ヨーロッパの茶市場はほぼ飽和状態にあります。一人当たりの消費量は10年以上前から減少しており、他の飲料、特にボトル入りの水との競争に直面しています。

今後10年間、西欧諸国では全般的に消費量の伸びが低下すると予想されます。例えば英国では、コーヒーをはじめとする他の飲料との競争が激化する中、紅茶が消費者の関心を維持するのに苦労しているため、紅茶の消費量が減少すると予測されます。

伝統的な欧州市場における紅茶の消費量の減少は、オーガニックティーやスペシャルティーなどの他のセグメントへの多角化や、健康やウェルビーイングへの効果を訴求することで、停滞あるいは逆転する可能性があるとしています。