二十四節気《雨水》について 春とお茶生活と

二十四節気とお茶のくらし お茶ガイド

雪が雨に変わるころ、雨水について。

立春の次にくる二十四節気が雨水(うすい)です。陰暦で立春から数えて15日目の日にあたります。現在では2月19日ころです。雪解けの季節で、空から降るものが雪から雨に変わります。地表の雪が解けるということは農作業開始の合図でもありました。ただ2月半ばだと雪国はまだまだ雪に覆われています。

まだまだ寒く温かいお茶がおいしい季節です。花見に向かって和洋問わずお菓子屋さんが華やかなお茶菓子を売り始めるころです。この時季から桜が満開の季節まで、お菓子売り場が一番絢爛豪華になる季節です。

雨水の七十二候

初侯 土脉潤起 つちのしょううるおいおこる 2月19日〜2月23日頃

冬の間凍っていた地表の雪が解け、土が潤う時季を表しています。このころには植物が芽吹く準備を始めるます。立春のあたりからふくらむ梅の蕾もだいぶ咲き誇るころです。

獺魚を祭る かわうそうおをまつる

七十二候とは中国から伝来した暦ですが、日本の季節や風土のずれがあるため江戸時代に日本合わせて変更されています。現代でいうところの「ローカライズ」です。雨水の初候は別に「獺魚を祭る」ともともと表現されていました。カワウソの習性として獲ってきた魚をすぐには食べずに、岩の上に並べておいておきます。これが陰暦の正月に先祖へお供え物をしているように見えることから、時候を表す言葉になったと言われています。獺の祭(おそのまつり)や獺祭(だっさい)とも言われ、なんとも愛らしい季節の言葉です。

次侯 霞始靆 かすみはじめてたなびく 2月24日〜2月28日頃

冬の凍えるような風がすっかりなくなり頬にあたる風が柔らかくなるころ、霞が漂います。冬の間は空気が乾燥しますが、暖かくなるにつれ空気が湿り気を帯びてきます。水分が霞となり野も山も覆います。

霞 かすみ

霞とは空気中に浮かぶ粒子のために、遠くがぼんやりとしはっきり見えない様子を表すことばです。霞に続く動詞は「たなびく」であり、「漂う」ではないのです。たなびくの漢字「棚引く」であり、横へ帯状に引くという意味です。

春の霞は夜になると「朧(おぼろ)」ということばに変化します。『朧月夜』のおぼろです。朧自体が「月が霞によってぼんやりとしている様子」を表します。霞にまつわる言葉の多様性に季節に対する感性が伺えます。

霞を表した有名な古典が清少納言の『枕草子』です。「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。」、春の明け方の山に掛かる霞はやはりたなびいていました

末侯 草木萌動 そうもくめばえいずる 2月29日〜3月4日頃

徐々に増えてくる日差しの暖かさにつられるかのように草木が芽吹くころです。若い芽は、青みがまだなく萌黄色というような黄みが強い色をしています。若いやわらかい小さな芽を見ると本格的に春がやってくることを教えてくれます。

雨水のころにおすすめのお菓子

うぐいすもち 鶯餅

うぐいすを模した可愛らしい餅菓子は、ほわほわとした見た目がうぐいすを想起させます。あんこを薄い柔らかな餅で包みこみ、青きな粉をまぶして作られます。端をすこし尖らせることで鳥の形に似せています。春のおとずれを告げるうぐいすを模していて、初春の趣を感じさせます。

うぐいす餅を名付けたのは戦国武将の豊臣秀吉とも言われています。この説が本当ならば作り手の餅菓子に青きな粉をまぶす戦国時代のセンスもいいですし、「うぐいす餅」と名付ける豊臣秀吉の感性も良いです。

こうばい 紅梅 

2月から3月にかけて、他の花より先んじて咲くのが梅です。早春といえども寒さが厳しい中、可憐に咲き誇り香り立つ花は気品にあふれています。

気品の白梅に比べて、紅梅の花びらは色濃く可愛らしい印象です。懐紙の白さに艶やかな紅梅の上生菓子が映えます。川越の亀屋さんの季節の練り切り菓子です。

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